ノーベル賞学者も推奨する「新顔」の働き 矢澤一良 著 文庫サイズ・48頁 まえがき —— 虚血性心疾患予防、疲労回復、運動能力向上などの起爆剤 狭心症の発作を起こしたとき、ニトログリセリンを服用すると胸の痛みがやわらぎます。
この事実は19世紀末頃から知られていました。
しかし、なぜそうした効果が得られるのかは、長いあいだ謎とされてきました。
ニトログリセリンの効果のしくみが明らかにされたのは20世紀末のことです。
アメリカの学者、ルイス・J・イグナロ氏が、ニトログリセリンを摂取すると体内で一酸化窒素(NO)に変化することを発見したのです。
イグナロ氏は、この発見を含めた一酸化窒素に関する研究で、1998年、他の2人の研究者とともにノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
一酸化窒素の働きは、医学・生理学において、それほど重要なものでした。
本書でこれから紹介するL—シトルリンは、この一酸化窒素の体内産生を促す作用があります。
体内で産生された一酸化窒素は、わずか数分の1秒で消えてしまいます。
その一瞬のあいだに、まさに「起爆剤」のごとく、さまざまな組織に影響を与え、多岐にわたる生理作用を生み出します。
血管の老化を防いだり、血圧を調整したり、血液をさらさらにして、心臓や脳を守る「心血管系」への働きはその最たるものです。
また、L—シトルリンには独自の作用も期待されています。
どこからどこまでがL—シトルリン単独の作用なのか、線引きするのは難しいのですが、L—シトルリンの摂取は、心血管系のみならず、疲労回復、精力増強、冷え性対策、さらには認知症の予防にも役立つ可能性が示唆されています。
おそらく、L—シトルリンの名を、本書で初めて耳にする人が大半と思われます。
なにしろ、わが国では2007年に食品として認可されたばかりの新顔で、一般的な知名度はほとんどないのが現状です。
他方、ヨーロッパでは20年以上前から薬の素材として利用実績があり、アメリカでもサプリメント(栄養補助食品)の形で広く利用されてきました。
そのため、L—シトルリンの健康効果および安全性に関する研究データは充実しています。
もともと、L—シトルリンは、私たちが普段口にする食品に広く含まれている成分でもありますから、安全性は歴史が証明しているともいえます。
●皮膚中の保湿因子の1つ L—シトルリンは、私たちの皮膚にも比較的多く存在します。
皮膚は、外側から表皮・真皮・皮下脂肪に分けられますが、このうち、表皮の最上層にある角質と呼ばれる部分で、L—シトルリンは肌のうるおいを保つ天然の保湿因子として働いています。
そうしたことから、L—シトルリンは美肌成分としても注目されています。
●紫外線によるシミやシワ予防に 保湿効果のほか、L—シトルリンはシミ・シワ対策にも貢献します。
太陽の日差しを過剰に浴びると皮膚が黒ずんできますが、これは太陽の紫外線が表皮中に多量の活性酸素を生み出し、メラニン色素が産生されるからです。
通常、表皮は活発にターンオーバーと呼ばれる新陳代謝を繰り返し、メラノサイトで造られたメラニン色素は徐々に押し上げられて、角質と共に垢として排出されます。
ところが、新陳代謝が衰えたりして、過剰なメラニン色素を排出しきれずに沈着したのがシミです。
また、活性酸素が皮膚の本体である真皮を直撃すると、今度はシワやたるみができやすくなります。
真皮の70%はコラーゲンと呼ばれる繊維状のたんぱく質でできていて、肌のハリを保つ原動力となっていますが、活性酸素はこのコラーゲン繊維も障害するからです。
日常的にL—シトルリンを補っていると、こうした紫外線によるシミやシワの予防に効果が期待できます。
目 次 —— 第1章 L—シトルリンって何? ・スイカから発見された天然成分 ・2007年に「食品」として認可 ・欧州では二十年以上の利用実績が 〈コラム〉リンゴ酸との組み合わせ 第2章 効果を生み出す基本作用 ・効果の秘密はNOの産生促進 ・血液の流れをスムーズに保つ ・免疫力の低下を抑える効果も ・ヒドロキシラジカルを速攻で排除 ・有害なアンモニアの解毒を促す ・L—シトルリンを摂取する利点 〈コラム〉一酸化窒素の光と影 第3章 こんな症状に効果的 ・高血圧の予防と改善に最適 ・虚血による障害から心臓を守る ・疲労回復、運動能力の向上に ・脳卒中の予防にも効果的 ・認知症に対する可能性 ・高齢者、病人の栄養状態の改善に ・うるおいのある美肌づくりに ・精力増強、冷え性対策にも ・寄生虫の感染を防ぐ効果もある ・効果的な摂取法Q&A 【ハート出版ふるさと文庫】L−シトルリンで血管機能血流アップ